なぜ待ち時間ができるのか
多くの医療機関は、来院患者の待ち時間が長くならないように、また長くなったとしても患者の気持ちを和らげるような取り組みをしています。では、そもそも待ち時間は何故できるのでしょうか。
待ち時間(待ち行列)ができる7つの要因
①患者の到着時間や来院の間隔
患者が診療所に来院する時間や間隔です。来院間隔が短いと患者数が多くなり、その間隔より診察や検査にかかる時間が長くなる状態が続くと待ち行列が長くなり、待ち時間も長くなります。
多くの診療所では、開業時間の前から患者が来院し、診察を始めるときにはすでに待ち行列ができ、その時に待っている患者の診察が終わらないうちに、開業後の患者が次々に来院するために待ち時間は長くなり混雑した状態が続きます。午前中混雑している診療所の多くはこのような状態になっています。
午後からの診察開始時もこのような状態からスタートすることになりますが、午前中ほど患者が来る来院間隔も短くなく、患者数も少ないため午前中に比べて早く混雑が解消します。
このような混雑の状態が続いているのになかなか改善できていない診療所は多いのではないでしょうか。しかし、これも正しい待ち時間対策によって改善することができます。
②診察や処置・検査等に掛かる時間
患者の診察や検査・処置などに掛かるサービス提供時間(処理時間)で、これらの時間が前記①の患者の来院間隔よりも長くなることが続くと待ち行列が長くなり(待ち時間が長くなり)、混雑してきます。
診療所は医師一人で対応している場合がほとんどで、患者満足度を向上しながら、このサービス提供時間(処理時間)のスピードをいかに上げていくかがととも重要なポイントになります。
③同時に診察できる診察室や医師の数、スタッフの数など
上記②の診察や検査・処置等を提供する医師や場所が多いほど、それらのサービスの提供時間(処理時間)が短くなります。サービスのスピードが上がり、来院患者の来院間隔よりも短ければ待ち時間は発生しません。しかし、診療所では、すぐにはそのような対応はできません。
現在、診療所は一人の医師で運営しているケースがほとんどですが、診療所も病院のようにより効率的な経営を求められることから、今後は複数の医師が対応する体制づくりも課題となっていくのではないでしょうか。
④診療所の収容患者数(待合室、駐車場など)
駐車場や建物が広ければ、患者の受け入れ人数が増えることから待ち時間が長くなり混雑する要因をつくります。
逆に、駐車場の収容台数や建物(待合室)の収容人数が少なければ、待ち行列は短くなり、待ち時間は短くなる要因になります。ただし、駐車場が一杯で諦めて通り過ぎてくれれば、駐車場での待ち行列はできませんが、駐車台数を超えても駐車場外で待ったり、建物内に入れないために外で待ったりすれば、それらを加えると待ち行列が長くなり、待ち時間が長くなります。
⑤診察の順番、診察・検査・処置等の順番
サービスの提供の順番を工夫することで待ち行列を短くすることができます。例えば、毎回同じ順番で行うのではなく、手の空いているスタッフが問診や検査を行うなど効率のいい順番を工夫すれば、サービスの提供時間(処理時間)が短くなり、待ち時間を短くすることができます。
⑥地域の人口や受療率など
全体の患者数が多ければ、待ち行列が長くなり(待ち時間は長くなり)、混雑を招く要因になります。
逆に患者数が少なければ待ち行列は短くなり(待ち時間は短くなり)、混雑は緩和される要因になります。
⑦診察室や処置室・検査機器などの配置
受付や待合室、診察室、処置室、検査室や医療機器などの設置場所を患者が円滑に流れるレイアウトにした方が無駄がなくサービス提供時間の短縮になります。
患者の導線が悪いと、患者の流れが悪くなり待ち時間が長くなります。患者の円滑な流れを考えたレイアウトが重要になります。
待ち時間の把握と分析
待ち時間対策に当たっては、その診療所の評価を向上させつつ、いつまでも今まで通り来てもらえるように対応していくことが重要です。
待ち時間ができる時間帯やなぜ待ち時間ができているのか、患者の来院の状況や待ち時間などの現状を正しく把握する必要があります。
予約患者のほうが、在院時間が長い!
3年に1回実施される厚生労働省の「受療行動調査」によると予約患者のほうが、通常の患者より在院時間が長かったことが分かりました。
その要因は診察までの待ち時間ではなく、予約患者は予約時間よりかなり早く来院しているためということも分かりました。
そして予約患者への改善策をとることで、予約患者の在院時間を短縮することができたとともに全患者の在院時間の改善につなげることができました。
診療所のシェアは何で決まるのか?
それは【リピート率】です!
A医院は、96%のリピート率(96%の患者が次にも来院)、4%がB医院に移動
B医院は、92%のリピート率(92%の患者が次にも来院)、8%がA医院に移動
上記の場合の最終的なシェアは、次のようになります。
A医院 ⇒ リピート率(96%) ⇒ 最終シェア率(66.7%)
B医院 ⇒ リピート率(92%) ⇒ 最終シェア率(33.3%)
どちらも高いリピート率ですが4%の差が最終的なシェアは倍の差がつくことになります。
いつも混雑している診療所とそうでない診療所の違いとは
よく見かける光景だと思いますが、患者の多い診療所はいつも多く、患者の少ない診療所はいつも少ないと感じているのではないでしょうか。
この差は上記のリピート率の差によるものです。このリピート率の差が、診療所の競争力の差となるわけです。
ただ、患者のリピート率が高く、いつも患者の多い診療所では待ち時間が長くなり混雑しやすくなり、その対策を誤り正しい対策を行わなければ、近くで同程度のリピート率で競合する診療所が正しい待ち時間対策や混雑の対策を行っていれば、そちらの診療所のリピート率が高くなり差がつくことになります。高いリピート率で競合している先であればあるほど小さなリピート率差が大きな差となって現れることになります。リピート率が低いままだといずれ診療所はいつも患者の少ない空いている診療所になってしまいます。
それでは、リピート率を高くするためには何が必要なのでしょうか。
リピート率を高めるためにはサービスの向上による患者満足度向上の取り組みが不可欠です。
リピート率とサービスの関係
サービスは次の3つに分かれると言われています。
コア・サービス
診療所であれば、医療や治療など診療所に求められる本質的なサービスとなるでしょう。従って、診療所であればドクターの能力や技量によるところが大きいサービスです。ドクターのスキルや経験、見識などによるものです。
サブ・サービス
診療所においては、本来のサービスを促進、支援するサービスです。スタッフの患者への対応や接遇などスタッフによるもの、あるいは、建物の利便性や設備、医療機器の充実度などによるものなどになるでしょう。
コンティンジェント・サービス
患者に対する臨機応変のサービスです。例えば、朝、患者が混雑していれば、早めに診療を始める。雨の日に傘を貸し出すなど、患者に対して、臨機の対応がどれだけできるかによるでしょう。
医療機関の患者満足度
医療機関の患者満足度は、ドクターによるところが大きく、そこで生じた不満をスタッフで補うことはできません。
しかし、サブ・サービスのほうが患者満足度を上げやすいのです。
患者満足度を向上することができるのはスタッフ次第ということなのです。従って、スタッフの高いモチベーション抜きにはサービスの向上や患者満足度の向上は実現しないのです。医師ひとりが奮闘しても患者満足度の向上は難しく、患者満足度向上の取り組みは、従業員満足度向上の取り組みでもあることを認識しなくてはなりません。
また、医療機関の待ち時間の不満は高く(満足度は低く)、多くの医療機関でそれは認識され改善に取り組んでいます。しかし、なかなか成果を上げられないのが現状ではないでしょうか。そのような状況の中、それが少しでも改善できれば他の医療機関に大きな差をつけることができます。